100年先の憲法へ 『虎に翼』が教えてくれたこと
太田啓子 著
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100年先の憲法へ 『虎に翼』が教えてくれたこと
- 太田啓子 著
- 太郎次郎社エディタス1400円+10%
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話題沸騰のNHK朝ドラ「虎に翼」。弁護士で、性教育やジェンダー等にまつわる2人の息子の子育ての悩みを書いた本も話題の著者。「虎に翼」がテーマの「憲法カフェ」の講演と、男性登場人物を論じたエッセイからなる。ドラマ未視聴の人も読める。
「虎に翼」は「感情の言語化を促す力の高いドラマ」で、「自然と憲法や法律の意味を理解できる」と著者。憲法前文の「不断の努力」の大切さや、13条を体現する、主人公・寅子の夫・優三の言葉。家制度解体と両性の本質的平等を定めた24条を作ったGHQのベアテさんと寅子が同じ時代の空気を吸っていたとの話にワクワク。
また性差別的価値観から距離を置くように変容する男性ロールモデルが少ないと常々感じていた著者。ドラマは謝れない男を念頭に「謝り方」のロールモデルを様々に提示している、と。恩師・穂高教授や友人・小橋の変容とリアルさに今後のヒントがあるかも。ドラマを見直したくなる!(花)
不確実な時代を生きる武器としての憲法入門
大城聡 著
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- 不確実な時代を生きる武器としての憲法入門
- 大城聡 著
- 旬報社1700円+10%
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憲法と聞くと何やら難しく考えがち? 東京の多磨全生園で知ったハンセン病から、居住・移転の自由や人格権といった憲法のことを考え始めたと、著者は言う。弁護士となり、現在は大学で新入生に憲法を教える時に、自分の経験をもとにした憲法入門を語るようになった。平和主義や基本的人権はもちろん、バイト先が劣悪すぎてやめたい、大きな災害に遭ったときの守られるべき人権など、身近な問題も説き起こし、憲法を「自分らしく生きるための武器にしよう」と語る。
いま問題の日本学術会議の任命拒否問題や、過酷な労働による過労死問題が、まさに憲法違反だと解説する。大学の新入生への宗教勧誘と「宗教と信教の自由」は知っておきたいこと。著者が長く関与した東京・築地市場の豊洲移転問題から「地方自治」を、「司法の独立」から裁判員裁判にも触れる。
「武器」にドキッとするが、あえてそう表現した理由はあとがきを読んでほしい。(三)
ガザの光 炎の中から届く声
R・アルアライールほか 著 斎藤ラミスまや 訳
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- ガザの光 炎の中から届く声
- R・アルアライールほか 著 斎藤ラミスまや 訳
- 明石書店 2700円+10%
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イスラエルのミサイルや砲弾が日夜降り注ぐガザ、「天井のない牢獄」に200万人が暮らすガザは、瓦礫と難民の象徴のように語られてはいないだろうか。本書は11人の著者の23編の文章が収められ、そこには、パレスチナの人々の生き生きとした歴史や文化・教育・伝承などが語られ、それらは硝煙と砂塵の中の一筋の光に見える。
詩人のリフアト・アルアライールは「物語を語ることが私の抵抗の手段。書くことは証言であり、一人の人間の記憶より永く残る」と語り、23年にイスラエルの空爆で殺された。しかし彼の言葉は確かに残っている。さらに、スマホを握りしめて空爆の下で録画を続ける若者や、AIをパレスチナ人の権利を取り戻すツールとして見据える視座も語られる。掉尾を飾るのはモスアブ・アブー・トーハのパレスチナそのものと感じる詩だ。「家の瓦礫を押しのけて咲く/バラを見たからって/おどろかないで/私たちはずっとこんな風にして/生きのびてきたのだから」(公)